1: 高低差速報
 AI時代の到来が叫ばれるようになり、“プログラミング”という言葉を耳にする機会が増えてきた。しかし、「プログラミングが重要だ」と言われても、漠然としていて何だかよく分からない、という人が多いのではないだろうか。プログラミングを学ぶことにどのような意味があるのか、カドカワ株式会社代表取締役社長の川上量生氏が解説する。

プログラマーが“人類最後の職業”に

 私はコンピューターのプログラミングを義務教育に取り入れるべきだと考えています。それは、プログラマーが〝人類最後の職業〟になりうるからです。プログラミングをマスターしていれば、世界中どこに行っても食いっぱぐれることはないという「実益」が第一の理由です。

 進駐軍の時代なら、英語ができる人間は、より有利にビジネスを進めることができました。今の時代であれば、プログラミング言語ができて有利になる世界のほうが広いでしょう。

 人工知能はどんどん進化しています。恐らく世の中にある仕事のほとんどが今後、人工知能でカバーできるようになるでしょう。それはかつて手工業で作っていた品々を機械が作るようになったのと同じようなものです。従来は機械化が難しいと思われていた熟練した職人のノウハウも人工知能が得意なものとして置き換わっていくでしょう。官僚が行っている仕事や医者による病気の診断なども人工知能がとってかわる可能性が高いです。

 ただ、税理士や会計士という職業は、生き残るかもしれません。税務申告や会計処理はルールが多く複雑なので、仕事自体は人工知能が得意とするところです。しかし、そのような仕事を職業とする場合には資格の取得が義務づけられています。人工知能がいくら発達していても、こうした法律で保護されているような職業は、なくならないのでしょう。

 究極的には人間の仕事は儀礼的なものしか残らなくなる可能性があります。ただし、過渡期においては、人間の仕事を肩代わりしてくれる人工知能に指示を出す人間が必要になります。それがプログラマーです。ですから、プログラミングは人間がおこなう最後まで残る仕事のひとつになるでしょう。もっとも、プログラミングを全ての人間が学ぶ必要があるかについて異論があるのは当然です。いくら人間にとって最後の仕事だとしても、全ての人類がプログラマーになるようなことは起こらないだろうからです。

中略

プログラミングを義務教育に――コミュ力と論理的思考力を養う
現代社会に生きる人間は、まわりに溢れているコンピューターの気持ちを理解することでより有利に生活を送ることができます。だからこそ、最低限の動作原理とプログラミング言語を小学生から学ばせるべきだと、私は考えているのです。

あらゆる企業、あらゆる職業の面接で、コミュニケーション能力というのは、もっとも重要視される指標となっています。それはどのような仕事においても人間との関わりが仕事の中心となっていることがほとんどだからです。これからはコンピューターとの関わりも避けては通れません。コンピューターとのコミュニケーション能力が重要になっていくのです。

 もうひとつ、プログラミング教育が重要な理由は論理的思考力と相関があるからです。プログラミングを学び論理的思考力を高めることは、プログラマー以外の職業でも役に立つのです。

 プログラミングもプログラミング言語も日々進化、多様化しています。あるプログラミング言語を覚えたとしても、10年後には使われていないかもしれません。それでも一度、そのプログラミングという思考のプロセスを学べば、論理的思考力の向上に役に立つでしょう。

 子どもたちにはプログラミング言語そのものよりも、論理的思考力を身につけさせることと、コンピューターの動作原理を理解させることが大切だと思います。ただし、義務教育にするならなおのことですが、最大の問題は、プログラミングを正しく教えるスキルを持った教師の数が絶対的に不足していることでしょう。どうせ人材の育成は間に合わないので、ネットでの遠隔授業の導入しか、現実的な解決策はないように思います。
http://bunshun.jp/articles/-/2810

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